「地域」で終末期を支えるということ――在宅療養を成り立たせる、現場のサービスと人のチカラ

病院のベッドの上だけが、終末期を過ごす場所ではない。住み慣れた自宅で、最期まで自分らしく過ごしたい——そう望む人を、地域はどのように支えているのか。往診、訪問看護、ケアマネジャー、薬剤師、そして在宅での看取りをめぐる現実まで、地域における終末期ケアの実際を見ていく。

Contents

1. 自宅に医療が「出向く」という仕組み

1.1 医療を受ける3つの場所

医療は受ける場所によって、病院やクリニックの外来に通って受ける「外来医療」、病院に入院して受ける「入院医療」、利用者の自宅(施設)などで受ける「在宅医療」の3つに大きく分かれる。終末期を自宅で過ごすという選択は、この3つ目、在宅医療という領域を軸にして成り立っている。

1.2 「往診」と「訪問診療」は、何が違うのか

在宅医療の中で医師が利用者の自宅(施設)などに出向いて行う診療が「往診」や「訪問診療」といわれるものである。この2つの言葉は似ているようでいて、実ははっきりと区別される。

「往診」とは、普段、利用者のお世話をしているご家族や訪問ヘルパー、訪問看護師等の報告により医師が診療の必要があると判断したとき、予定外に利用者の自宅などに赴いて行う診療を指す。つまり、「何か変化があった」という緊急の知らせに応じて駆けつける診療である。

これに対して「訪問診療」とは、在宅療養を受ける利用者で疾病や傷病のために通院が困難な方に対してあらかじめ診療の計画を立てて利用者の同意を得て定期的に自宅などに赴いて行う診療を指す。あらかじめ決まったスケジュールに沿って、計画的に行われる診療である。

1.3 終末期だからこそ必要な、チームによる継続ケア

終末期においては利用者の状態が著しく変化しやすい状況にあるため、計画的な訪問診療のみでは利用者を支えきれなくなることが多い。よって、利用者の日常生活を支える家族だけでなく、訪問介護士や訪問看護師が1つのチームとなって継続したケアを提供し、「いつもと違う」と気づくことが大切である。日ごとに変化する状況を共有し、気づきがあればスムーズに医師に報告、相談することが重要である。

「いつもと違う」という直感の重要性が、ここでは在宅医療の現場における、チーム連携の出発点として位置づけられている。

2. 終末期に使える、在宅サービスの全体像

2.1 介護認定を起点に、サービスをつないでいく

終末期において、介護保険を使う場合、介護認定調査を受けた後、訪問診療医・訪問看護・訪問介護・ケアマネジャーなどの在宅サービスを使って療養環境を作っていく。在宅療養は医療の力だけでなく、生活を支える介護の力も必要となる。ケアマネジャーは、介護と医療をつなぐキーパーソンとして存在する。

2.2 急変に備える「区分変更」という仕組み

介護認定調査は新規申請の場合、原則として6か月間が有効期限となる。この期限に関わらず、状態が変わった、悪化したという場合には区分変更と呼ばれる再審査を受けることができる。要介護度を変更した方がよいという場合は、ケアマネジャーに相談し、市町村の窓口で要介護認定の区分変更の申請をする。

病状が刻一刻と変化する終末期だからこそ、6か月という通常の更新サイクルを待たずに介護度を見直せるこの区分変更の仕組みは、実務上きわめて重要な役割を果たしている。

2.3 事業者選びは、本人・家族の希望を軸に

訪問看護や訪問介護といった介護保険サービスでは、どの事業者を利用するかは利用者本人及び家族にゆだねられる。ケアマネジャーに紹介してもらう、かかりつけの病院が運営している訪問看護を利用するなど選択肢はいくつもある。本人の希望や家族に合った事業者を選択する。

2.4 在宅療養生活の要となる「主治医」

在宅療養生活で最も重要なのが主治医である。主治医は定期的な訪問診療や、状態が悪化したときの対応、死亡後の書類作成等を行う。また、訪問看護師に医療行為を指示するのも主治医である。在宅療養にむけて在宅医を選定することが必要であるが、治療をしていた病院の地域連携室などが主治医の選定を支援してくれることが多い。

3. 家族の介護負担を軽減する、2つの仕組み

在宅での介護は、本人だけでなく介護を担う家族にも大きな負荷をかける。この負荷を一時的に軽くするための支援として、レスパイト入院とショートステイがある。

3.1 レスパイト入院

介護する家族が心や体を休めることを目的に一時的に入院すること。

3.2 ショートステイ

自宅での介護が一時的にできなくなった場合などに、その期間だけ利用者本人が老人ホームや介護施設に入居すること。

3.3 似て非なる、2つの制度の違い

介護者の休息のための制度という意味合いでは同じだが、対象者・医療ニーズの有無・保険種別・連続利用日数においてはレスパイト入院とショートステイに大きな違いがある。

①対象者の面では、レスパイト入院は医療的なケア・管理が常時必要な方を対象とするのに対し、ショートステイは介護認定を受けている方を対象とする。

②医療ニーズの有無では、レスパイト入院は病院で行うため医療ニーズがあっても受け入れ可能であるのに対し、ショートステイは医療ニーズがある場合、受け入れられない場合もある(施設により医療体制が異なる)。

③保険種別も異なり、レスパイト入院は医療保険、ショートステイは介護保険が適用される。

④連続利用日数についても、レスパイト入院は連続利用日数最大14日、連続しない場合は合計日数60日まで、60日に達した場合はそこから90日間レスパイト入院の利用ができなくなる一方、ショートステイは連続利用日数最大30日、連続しない場合は介護認定期間の半数までという制限がある。

介護者の制度として両方似た役割だが、保険の種別や医療行為の有無により異なるため本人の状態に合わせた施設を選ぶことが大切である。近年はロングショート(事情に合わせて長期滞在ができるショートステイ)や医療対応ができる有料老人ホームでの短期ステイなどの選択肢も増えている。状況に合わせてケアマネジャーや主治医、包括支援センターや病院の相談室などに相談していただくことをお勧めする。

4. 終末期における訪問看護師の役割

4.1 「利用者」ではなく「一人の人」として

終末期では、利用者の生活の質をできるだけ高めることが重要である。利用者が、その人らしく満足して生活できるようサポートすることが訪問看護師の重要な役割である。そして、「利用者」ではなく、「一人の人」としてその人の全体像を知り、今あるニーズを把握することが大切である。

看護師は、死へ向かっている患者様、その家族の不安・恐怖に寄り添いながら、共に悩み、どうするのが最もよい方法かを考え、分かち合う姿勢で接することで安心感を与えることができる。現在の利用者の病状と今後予想される経過をなるべくわかりやすく伝え、急変の可能性があることも伝えながら、最期まで「生きる」ことを支援できるようサポートする。

4.2 日ごと、時間ごとに変わる状況への対応

そのため、日ごと、時間ごとに変化する終末期には、訪問の頻度やケアの方法を工夫しながらサポートしている。例えば、末期がんの場合、訪問回数を週4日以上にしたり、1日に複数回訪問したりする。苦痛の強い方には看護師が2名で訪問して支援するなど、制度上可能な中で臨機応変に対応している。

4.3 在宅診療医との連携という、要の役割

また、訪問看護師はさまざまな在宅診療医と連携をとっている。在宅診療医の意向や療養方針を確認しながら、生活の変化、病状の変化、本人や家族の想いの変化を見極め、医師と本人・家族の懸け橋となり、円滑な意思決定支援を目指してコーディネートを行う。

前章で扱った意思決定支援やアドバンス・ケア・プランニングの理念が、ここで訪問看護師という具体的な職種の、日々の実践として体現されていることが分かる。

5. 居宅介護支援:生活を組み立てる土台

5.1 居宅介護支援とは何か

老化や病気により、生活に様々な支障が生じる。その際、ケアマネジャーが、利用者本人や家族への聞き取りから、状況に合わせた介護保険サービスにつなぎ、利用者が望む生活を続けられるように調整することを居宅介護支援という。

5.2 誰が利用できるのか

利用対象者には次の3種類がある。65歳以上で、要介護認定により、要介護1から要介護5の認定を受けた方(第1号被保険者という)、40歳以上64歳以下で、特定疾病(老化が原因とされる16種類の病気)があり、要介護認定により要介護1から要介護5の認定を受けた方(第2号被保険者という)、市町村が窓口になる基本チェックリストでの該当者(ただし要支援の認定を受けた方は地域包括支援センターの管轄となる)である。

5.3 ケアプランという、生活の設計図

ケアプランとは、ケアマネジャーが利用者の目標達成のために作成する計画書のことである。ケアマネジャーは、利用者が望む生活を続ける上での問題点や課題を明らかにし、利用者本人や家族の意向をもとに、それを解決するための目標を立てる。そして、その目標を達成するための支援内容を、主治医を含めた多職種からの意見を取り入れながら作成していく。ケアプランは、利用者の身体状況や意向に変化があれば、その都度見直しを行い更新する。

5.4 サービス担当者会議という、多職種の対話の場

サービス担当者会議は、初めて介護保険サービスを使うとき、認定期間が更新されるとき(ケアプランの更新)、身体状況や意向に変化があり支援内容に見直しが必要となったとき(ケアプランの更新)に行う。ケアマネジャーはアセスメントをもとにケアプランの原案を作成する。それをもとに利用者宅、入居施設などにおいて、利用者本人、家族、関係する事業所が集まり、支援内容についての意見交換を行う。

普段なかなか会えない多職種同士が顔を合わせて情報共有を行える貴重な場であり、生の声での意見交換をすることで、目標の共有ができ、より利用者の意向に沿ったケアプランの作成につなげることができる。ただし、昨今のコロナ禍の状況では、多人数で集まることが難しく、照会による書面での開催やZoomでの開催も少なくない。

5.5 介護保険サービス利用の流れ:5つのステップ

①支援が必要になったら窓口に相談する:市役所の高齢福祉課など(市によって窓口の名称は異なる)、在宅介護支援センター(地区ごとに配置)、地域包括支援センター(在宅介護支援センターを支援する機関)といった窓口がある。

②要介護認定を申請する:本人、家族以外にも①の相談窓口や、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)なども代行申請ができる。

③認定調査を受け、審査を経て、認定結果が通知される:調査から約1か月で自宅などに結果が届く。非該当、要支援1・2、要介護1・2・3・4・5(要介護5が最も支援の必要性が高く、支援に充てる時間が多い状態)に分かれる。

④要支援の場合は地域包括支援センターと契約し、介護予防ケアプランに基づいた介護予防サービスを利用開始する。要介護の場合は居宅介護支援事業所と契約し、ケアプランに基づいた介護保険サービスを利用開始する。

⑤ケアマネジャーは定期的にモニタリングを行い、ケアプランの見直しが必要かどうかの確認をする。担当している間、繰り返し行う。身体状況、意向に変化がないか本人と面談し確認する(おおむね1か月に1回自宅などを訪問する)。見直しが必要な場合は、その都度担当者会議を開催する。身体状況や意向に変化があれば、認定期間内であっても変更申請を行うことができる。

6. 終末期におけるケアマネジャーの役割

6.1 ACPの考え方を、在宅の現場で体現する

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)におけるケアマネジャーの在り方は、Advance(前もって)・Care(治療や療養の場について)・Planning(話し合うプロセス)の意味を理解して「ご本人の人生をどう生きたいか」「これからの人生でしたいことは何か」「どこでどのように暮らしていきたいか」などについて、話し合いを繰り返し行うことである。

ACPの理論が、ここでは具体的に「誰が、どのような立場で、本人に問いかけ続けるのか」という実務上の担い手として、ケアマネジャーという職種に落とし込まれている。

6.2 在宅終末期特有の、医療的な調整

在宅終末期では、医療保険介入となることも多い。しかし、日々に病状が重くなっていく過程において、住宅改修、福祉用具の使用、吸引器の準備、ヘルパーの手配などの対応が必要となることがある。医療処置や病状管理、家族支援が必要な場合には、在宅診療医や訪問看護師との連携をケアマネジャーが整備することもある。特に、清潔・排泄・食事の生活支援は家族の大きな負担となることが多い。生活しやすくするための物品の提案もケアマネジャーにとっては重要な役割である。

6.3 「言葉の翻訳者」としての役割

ケアマネジャーは利用者から、医師や看護師への希望や要望を聞くことが多い。医療処置や治療に関することであれば、そのままの言葉を医師や看護師に伝え、簡略化したり、自分の先入観や憶測を入れたりしないように配慮する。終末期においては本人の訴えが直接聞けないことも多い。医療者よりもケアマネジャーのほうが付き合いが長く、情報を多く持っていることも少なくない。だからこそ、家族が感じていることをキャッチして医療者へつなげることもケアマネジャーの役割である。

利用者の言葉を、専門職に過不足なく届けるこの「翻訳」の機能は、「代弁者」という役割(看取りケアの章で触れた、故人の思いの代弁者としての医療・介護従事者の役割)と、形を変えて響き合っている。

6.4 緊急時の備えという、避けられない現実

終末期は思いがけないことが起こることも多く、誰もが緊急時の受け入れベッドが確約されているとも限らない。医師や看護師にとって、地域の中に医療と介護をつなぐケアマネジャーがいてくれることは非常に心強く、ケアマネジャーがいるからこそ、医療と看護に専念できる。自信をもって地域で輝いてほしい。

7. ケアマネジャーだからできる、家族へのケア

7.1 在宅終末期という、家族にとっての非日常

医師から予後を告げられると本人だけでなく家族も受け入れ難い心境から始まり、動揺、戸惑い、不安など、心ここに在らずといった時間を過ごすこととなる。在宅で終末期を過ごす選択肢が選ばれた場合などは、普段の生活が一変し、利用者本人中心の生活となり、家族は仕事や自分の時間を割いて最期の時間を共に過ごすこととなる。そんな中ケアマネジャーはどのような関わりが必要となるのだろうか。

7.2 情報の橋渡し役として

まずは訪問診療などに家族とともに立ち会い、医師からの指示やアドバイスを聞き逃さないことが大切である。家族は今まで見たことのない本人の状態に動揺してしまい、医師の説明が理解できていない場合がある。そんな時、ケアマネジャーは、医師からの説明を何度も家族に繰り返し伝えることができる。今後起こり得る状態についても家族とともに医師から聞いておくことで慌てずに必要な支援を準備することができる。たとえ、利用者ご自身が意向を伝えることができなくなったとしても、本人の代弁が出来るように意向の確認を常日頃からしておくことが必要となる。

「ああすればよかった、こうしていたら今の状態にならなかったのでは」と家族は悩んだり後悔したりを繰り返しながら日々過ごされる場合が多い。そんな気持ちも共有し、家族の身体的負担や精神的負担にも目を配りながら、できるだけ後悔の少ない最期を迎えることができる環境を整えて支えていくことがケアマネジャーとしての役割である。

7.3 生前からの、グリーフケアという視点

が、生前からのグリーフケアも重要である。家族にとって大切な人との別れが近づいていることへの深い悲しみ、今後への不安など様々な思いが入り交じり気持ちが追いついて行かない状況となることが考えられる。

ケアマネジャーとしては直接的介護を行うことはないが、本人、ご家族の気持ちに寄り添い支援を行うことが求められる。残された時間が少しでも楽しく、思い出に残る良い時間を過ごすことができるよう支援することが大切である。

グリーフケアの「予期悲嘆」が、ここでも家族の死別前からの支援という形で、具体的な実務の中に位置づけられていることが分かる。

7.4 契約が終了するとき

契約の終了理由として、利用者の希望により契約が解約されるとき、居宅介護支援事業者の理由により契約が解約されるとき、契約の自動終了(利用者が介護保険施設に入所したとき、利用者の要介護認定区分が非該当または要支援1・2と認定されたとき、利用者が死亡したとき)、その他の理由(事業所の管轄外の市町村に転居されたとき、長期間〈半年以上〉の入院が決定となったとき)などが挙げられる。内容は各事業所の契約書により異なる場合があるため、契約書を確認しておく必要がある。

8. 終末期にまつわるお金:介護保険・医療保険・生活保護

8.1 お金と制度は切り離せない

支援において、お金と制度は切っても切り離せない関係である。それは、支援を受けるために保険制度を使ったとしても、生活をしていくためには金銭の負担が生じるからである。国民年金、厚生年金、障害者年金、生活保護など、個々に利用できる制度が異なる。

8.2 支援計画は、あくまで生活の一部

居宅サービスだけに、お金を全て注ぎ込むことはできない。家賃、日用品、食材、趣味趣向品なども考慮して生活されていることを忘れてはならない。お金の使い方の優先順位は人それぞれ異なっており、支援者が良かれと思って組む支援計画も、あくまでも本人、家族と相談し、生活資金の一部として考えていかなければならない。自分たちの支援にいくら費用が発生するのかを認識し、それに応じたサービスが提供できるように努める。

8.3 要介護度によって変わる、金銭的な負担

例えば終末期の悪性腫瘍と診断を受けた場合、我が四日市市では(市域の独自ルールで)要介護2以上の認定結果が必須である。要介護2になれば、利用者が過ごされる特殊寝台(介護ベッド)、特殊寝台付属品(ベッド柵、テーブル)、床ずれ防止用具(エアーマット)の貸与が保険適用となる。自費で貸与となれば月々高額な費用が発生する。これが保険適用になるかならないかでは金銭的な負担も大きく変化してくる。また、訪問看護も要介護認定を受けた方であれば介護保険ではなく医療保険での支援介入となる。

8.4 スピード感を持った支援が求められる

終末期において、病状は日々急激な変化を遂げることが多い。その時には、介護保険、医療保険制度の知識を兼ね備え、なおかつスピード感を有して支援に携わることが求められる。

9. 居宅療養管理指導:自宅に届く専門職の知恵

9.1 居宅療養管理指導とは

通院が困難な利用者の自宅や施設などに地域の医療従事者が訪問して在宅医療を提供することである。医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などが訪問し、介護保険を利用する。

9.2 対象者と仕組み

基本的な居宅療養管理指導の対象者は、介護保険サービスを利用できる65歳以上で、要介護1〜5と認定されている利用者である。介護保険に加入している40歳以上64歳以下で、特定疾病と診断され、医師が在宅医療の必要性を認めた場合には65歳未満でも介護保険が利用でき居宅療養管理指導の対象となる。

薬局の薬剤師は、医師又は歯科医師の指示により薬剤師が作成した薬学的管理指導計画に基づいて利用者の居宅を訪問し、薬学的管理指導を行う。ケアマネジャーに対して居宅サービス計画の作成に必要な情報提供を行った場合は、1か月に4回まで算定できる。

単位数は、単一の建物に対し1名の場合517単位、単一の建物に対し2〜9名の場合378単位、単一の建物に対し10名以上の場合341単位となっている。

9.3 薬剤師が担う、きめ細かな業務

居宅療養管理指導はかかりつけ薬局の薬剤師が行うことが多い。服薬情報に関する管理や指導は、在宅でも来局でも基本的には同様で、服薬状況の確認や副作用を含む体制変化、多剤・重複投与、一般医薬品やサプリメント・食物との相互作用などのチェックが薬剤師の基本的業務である。利用者家族への薬の情報提供、薬の保管方法や服用方法の指導、服薬カレンダー等のツールの利用、一包化・粉砕・嚥下補助剤などの服用しやすい剤形選択の提案なども大切な業務である。利用者のご自宅や入居先の施設に訪問し、ご本人だけでなく家族やスタッフとも密なコミュニケーションをとれる立場だからこそ、ご本人の状況や状態をより細かに把握することができる。これが在宅医療に携わる薬剤師の強みである。

9.4 他剤併用の見守り役

その強みを生かしながら主治医や訪問看護師等と連携することで、より効果的な投薬をサポートすることができる。利用者によっては複数の医療機関にかかっていることも多く、薬の種類によっては相互作用が出てしまい、かえって体調を悪化させてしまうこともある。こうした状況もしっかりと把握し、正しい飲み方や薬剤の管理方法を指導したり、主治医に進言したりすることは薬剤師だからこそできる役割である。

9.5 ジェネリックという選択肢

新薬の特許が切れた後のタイミングで製造販売される新薬と同じ有効成分で作られ、効き目が新薬と同等であると国に承認された薬のことである。健康状態を考慮して医師が処方する薬の適切な管理は、終末期の在宅療養に必要不可欠である。複数処方される薬の飲み忘れや飲み過ぎを起こし、体調管理が不安定になることも予想されるからである。

9.6 薬の管理は、診察の「その後」こそ重要

医師の診察を受けるだけで終わりではなく、その後に処方される内服薬管理も重要である。医師が診察した結果にて、薬剤が処方されるが、薬はジェネリックも含めて日々新しい薬剤が世に出回る。ケアマネジャーの中には、薬の管理は訪問看護師が、薬の受け取りはヘルパーに依頼しようと考える人も少なくない。そういった中で、薬剤の専門家である薬剤師の支援介入があると、医師から処方された処方箋を基に調合し、自宅まで届けてくれるサービスもある。薬の配送だけでなく、効能や注意点の説明、余った薬剤の処理、飲み忘れの主治医報告など薬剤管理全般を担っている。

10. 居宅介護支援の終結

利用者が死亡した際には居宅介護支援は終結し、居宅介護計画に立案されていたすべてのサービスが中止される。ケアマネジャーとして利用者の支援を行う上で、終末期に立ち会う機会は少なくない。近年(2023年現在)はコロナ禍ということもあり、住み慣れた自宅で家族と共に最期を迎えたいと望む方も多い。

終末期の利用者本人、ご家族に対してケアマネジャーができる支援として、サービスの調整をはじめ多職種との連携はもちろんだが、生前からのグリーフケアも重要である。家族にとって大切な人との別れが近づいていることへの深い悲しみ、今後への不安など様々な思いが入り交じり気持ちが追いついて行かない状況となることが考えられる。

ケアマネジャーとしては直接的介護を行うことはないが、本人、ご家族の気持ちに寄り添い支援を行うことが求められる。残された時間が少しでも楽しく、思い出に残る良い時間を過ごすことができるよう支援することが大切である。

10.1 契約が終わる、いくつかの理由

契約の終了理由として、利用者の希望により契約が解約されるとき、居宅介護支援事業者の理由により契約が解約されるとき、契約の自動終了(利用者が介護保険施設に入所したとき、利用者の要介護認定区分が非該当または要支援1・2と認定されたとき、利用者が死亡したとき)、その他の理由(事業所の管轄外の市町村に転居されたとき、長期間〈半年以上〉の入院が決定となったとき)などが挙げられる。内容は各事業所の契約書により異なる場合があるため、契約書を確認しておく必要がある。

11. 在宅での看取りの現状

11.1 誰もが望む「住み慣れた場所での最期」

どのようなご病気や障がいをお持ちであっても最期は安心して住み慣れた生活の場で過ごしたいと思うであろう。しかしそのためにはご本人、ご家族の選択と心構えが必要である。そこには当然メリット・デメリットがある。住み慣れた生活の場で過ごせるということは最大のメリットであるが、家族の介護負担や緊急時の対応などデメリットも多い。

11.2 データが示す、死を迎える場所の現実

厚生労働省が発表している日本人が最期を迎える場所の最新のデータにおいて、近年は少しずつ病院の割合が減ってきてはいるが未だ68.3%と1番多い。施設は老人ホーム9.2%、介護医療院・介護老人保健施設3.3%である。自宅は微増しているが未だ15.7%である。

「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」などは施設と称されるが居宅と同様の扱いでカウントされるので、施設と自宅を合わせると年々在宅での看取り率は上がってきているといえる。看取え体制が整った施設系サービスが徐々に増えてきているが、在宅での看取り率の中には、孤独死も含まれる。

数字の上では在宅での看取り率が上がっているように見えても、その内実には「孤独死」という、本来望ましい看取りとは異なる現実も含まれているという指摘は重要である。在宅看取りの「量」の増加が、必ずしもそのまま「質」の向上を意味するわけではないことを、この一文は静かに物語っている。

12. 訪問系サービス経営の実情と今後の課題

12.1 地域包括ケアシステムを支える、要の存在

国が推し進める地域包括ケアシステムを支えるために重要な訪問サービスである。その中でも医療介護分野にまたがりその中枢を担うのが訪問看護であるといえる。2019年からのコロナ禍の約3年で訪問看護ステーション事業所数は約23.3%増の14,254件(2022年)、訪問リハビリテーション事業所数23%増の4,894件(2022年)、訪問介護事業所数3.7%増の36,044件(2022年)と訪問系サービスは軒並み増加している。一方、デイサービスやショートステイなど通所系サービスは感染の懸念により利用が控えられた。事業所の閉鎖も2022年は過去最多であった。

12.2 コロナ禍が後押しした、訪問看護の伸び

コロナにより通所系の利用が控えられた反面、医療ニーズの高い利用者を在宅で支える必要性が生じたために訪問系のサービス、特に訪問看護ステーションの伸び率が大きかった。

12.3 数は増えても、経営基盤は脆弱

近年急激に訪問系サービス事業所数が伸びている一方、資金繰り悪化などによる事業所の閉鎖、サービスの質のバラつき、人員不足など、社会資源としての役割をしっかりと担うにはまだまだ課題が多いのが実状である。経営者自身が経営スキルを磨くことで持続可能な経営の基盤を築き、スタッフの労働環境をより良くして技術の向上を図り、魅力ある会社づくりをしていく必要がある。

12.4 事業者同士の連携、そして行政との関わり

地域の社会資源を担う事業者同士での連携、地域との関わり、行政との関わりも欠かせない。まさに「自助・互助・共助・公助」による支え合いの仕組みである。それぞれがサービスのすみ分けを明確にし、医療に対応できる施設の配備など、医療ニーズの高い方を地域でも受け入れ可能にしていくことでそれぞれの社会資源が役割を全うできるのである。

13. まとめ:地域という名の、見えないチーム

地域における終末期ケアとは、往診と訪問診療という2つの異なる在宅医療の形、訪問看護師の日々のきめ細かな調整、居宅介護支援というケアプランの土台、そしてケアマネジャーが担う情報の橋渡しと家族への寄り添い、さらには薬剤師が自宅まで届ける専門的な知恵まで、多数の専門職が緩やかに連携し合うことで初めて成り立つ、一つの大きなチームワークである。

多職種連携という理念は、ここに至って、病院という一つの建物の中だけでなく、地域という広がりを持った空間全体に拡張される。レスパイト入院やショートステイで家族の休息を確保し、区分変更で変化する病状に素早く対応し、お金の制度を正しく使い分ける——こうした一つひとつの地味な調整の積み重ねこそが、「住み慣れた場所で最期を迎えたい」という、誰もが抱く願いを、現実のものにしているのである。

在宅での看取り率が徐々に上がりつつある一方で、その中に孤独死が含まれているという現実、そして訪問系サービスの経営基盤がまだ脆弱であるという課題は、この地域包括ケアという仕組みが、まだ発展の途上にあることを示している。自助・互助・共助・公助という重なり合う支え合いの輪を、どれだけ丈夫に、そしてどれだけ温かく編み上げていけるか。それこそが、これからの多死社会における、地域全体に課せられた宿題なのだろう。